●株主優待の魅力

株主優待の魅力

 今年からNISA(小額投資非課税制度)が始まり、上場企業による個人投資家
への還元姿勢が注目されています。その流れを受けて、自社製品などを提供す
株主優待制度を設けた上場企業も増加。一部報道によると7月末時点の導入社
数は、過去最高の1148社に上るとのことです。実は、この株主優待制度は日本
だけのものです(米国ではスターバックスコーヒーなど、一部の企業しか導入
していません)。一方でこの制度は、海外の機関投資家からは好まれない制度。
株主優待は海外にまで送付されることはなく、何らかの方法で受け取れたとし
ても換金の手間がかかるからです。

●外国人投資家が嫌がる本当の理由

 最大の理由は、株主優待制度を導入はその企業の利益率悪化を招くことが挙
げられます。株主優待のために捻出されるお金は、損金参入されない交際費
(=節税効果が極めて薄い費用)として計上されるので、ただのコストとなり
ます。
 例えば、株主優待にかかる費用が1万円で、売上高粗利率が10%の企業を想定
してみましょう。株主優待導入のために発生したコストの元を取るためには、
株主優待とは別に10万円の売り上げを確保する必要があります。利益率が1%な
ら、追加で100万円の売り上げが必要になるわけです(ここでいう元を取ると
は、コストを吸収しただけで利益ではないのに注意!)。

 本当の株主還元とは、利益率の改善を高めて企業価値を向上し、長期的な株
価上昇を株主に提供することではないでしょうか。実際、ファーストリテイリ
ングやセブン&アイ等の超優良企業は、企業価値を損ないかねないとして株主
優待を導入していません。一方で、株主優待を導入しているからと言って、そ
れで株価が長期的に上昇が続いているという企業もあまり聞きません。